鈴木雄大 Yudai SUZUKI





この度、四谷未確認スタジオにて鈴木雄大によるはじめての個展「すべてが透明になる前に」を開催いたします。

これまで鈴木は、作者自身の身体とディスプレイの画面内容との対話それ自体を表現のメディアとするような作品を制作してきました。彼はゲームや絵画、映像といったメディアを自由に行き来することで、鑑賞者と作品との対話の多様なあり方をやわらかに攪拌します。その実践は複数の異なる現実を統合するためのシンタクス(統語法)の発明であるように感じられます。今回は3つの映像再生機器のために、それぞれ異なる対話性を持った作品を制作し、展示する予定です。

本展それ自体が、すべてがobjectに一元化された地平、つまり彼が「メタ・マテリアル」と呼ぶ地平からイメージを転移させるための方法であると言えるでしょう。それはヒト・スタイヤルが航空写真などを引き合いに出しながら述べる「垂直性のパースペクティヴ」を、テクノロジーではなく個別の身体の次元で実践することを意味します。鈴木が展示空間に展開する作品は、鑑賞者であるあなたの身体へと直接的に作用するのです。若き気鋭の作家の初個展に、是非足をお運びください。

布施琳太郎(キュレーション)





ステートメント

近年私たちの身の回りには情報を映し出す板、「ディスプレイ」が至る所に溢れている。テレビに端を発し、現在ではスマートフォンやデジタルサイネージがあらゆる場所に普及している。私は、ディスプレイの中の対象の事を「メタ・マテリアル」と名付ける。メタ・マテリアルはイメージではなく、ディスプレイの中で展開される現象の質だ。デジタルイメージはディスプレイの上でのみ可視化され、最終的にディスプレイそのものの平面性に回収される。映像メディアの鑑賞は、既に定着されたイメージを解読し、鑑賞者の意識下で空間を再構築する事で成り立つが、メタ・マテリアルを鑑賞するにはディスプレイを、内部の現象をダイレクトに観るための「窓」として捉える必要がある。そのような事が可能だろうか?仮にディスプレイの向こう側に仕事を手助けしてくれるキャラクターがいると想定する。彼らはインターフェース(Interface)だ。機械言語と人の言語をつなぐものたち。補助機能としてのそれは、メディアと人の単線的な関係を仲介する道具に過ぎなかった。しかし、映画やテレビよりも”手前”にインターフェースが立ち上がる環境では、主・客は逆転する。我々がディスプレイを覗く時、ディスプレイもまたこちらを覗いている。このような状況では人間主体(subject)と対象(object)の関係は一新され、objectに一元化される。ヒトも動物も風景もキャラクターも等しくオブジェクティヴに扱われる時、すべてはメタ・マテリアルと化す。

すべてがメタになる前に、すべてが透明になる前に何が出来るのか?消えゆく身体を、意識を、転送して、転送して、転送する。遠い記憶をなぞるように形而上の世界を操作する。労働を創造に置き換える。メタ・マテリアルをイメージから運動の次元へ落とし込んでしまえ。未知の身体感覚をダウンロードし、それを再びネットワークにアップロードする。キャラクターによって不完全に再現された運動は再び現実世界にフィードバックされる。メタの中にバグを少しだけ加える。CGによる現実の再現不可能性は新しい想像力を生み、過剰接続の悪夢を美術の可能性に変換させて見せるだろう。

テキスト 鈴木雄大






開催概要
名称:鈴木雄大個展「すべてが透明になる前に」
会期:2019年8月10日~8月18日
時間:平日16:00~20:00 休日14:00~20:00
会場:四谷未確認スタジオ(東京都新宿区四谷4-13-1)
入場料:500円
キュレーション:布施琳太郎
主催:四谷未確認スタジオ


イベント「鈴木雄大 全作品上映会」
日にち:8月15日(木)
時間:18:00―20:00
料金:1000円
上映終了後にアーティスト小林耕平さんをお呼びしてミニトークを行います






鈴木雄大 Yudai SUZUKI

1993年生まれ。2017年武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻卒業
2019年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻卒業
主な展覧会 「The Continent,八木と」(アートスポットシャトー小金井2F),「ソラリスの酒場」(The CAVE),「AUTO」(N-MARK B1)
https://yudai-suzuki.wixsite.com/

”TRANSFER" 2019(映像作品のキャプチャ画像)

”This is Square Screen" 2018(AUTO展での展示風景)