タイムマシンのつくり方
オンライン講義
0.講義開催のお知らせ
この度、布施琳太郎によるオンライン講義『タイムマシンのつくり方』を開催します。
本講義における「タイムマシン」は比喩ではありません。
あくまでまっすぐに、そのつくり方を考えるために、この講義は開催されます。
タイムマシンは、これまで私が作品制作やキュレーション、文筆活動、教育機関などでの講義、多様な専門家や友人との議論のなかで育んできた領域横断的な問題系を超圧縮して、徹底的に思考し、そして共有するのに格好のテーマです。受講を検討いただけたら幸いです。
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1. なぜタイムマシンなのか?
時間移動というより「時間を共有できなくする方法」を考えることが、いま重要だからです。
全員が同じ時間を生きている……そんな幻想に対して別の現実原則を示すかのように、H・G・ウェルズは小説『タイムマシン』(1895年)を書きました。それからしばらく経ってアインシュタインが発表した「相対性理論」は時間が単一であるという前提を揺るがしました。
しかしその後、連綿と続いた「現代アート」のメインストリームが「同時代性=共時間性(contemporaneity)」を前提にするとき、せっかく手にした「タイムマシン」という思考と実践を行き来する方法を忘却してしまったように思うのです。仮に、美術から離れてみても、ソーシャルメディアやチャット型インターフェースは人々やAIが「同じ時間を生きている」かのような経験を捏造します。そうしたなかでタイムマシンについて考えることは、自分の想像力を、自分自身のものとするためのキッカケになるでしょう。
たとえば、乗り物モデルのタイムマシンを考えてみましょう。その本質は、搭乗者と、それを見送る人々のあいだに生じる「決定的に埋められない経験のズレ」だと私は考えています。
まるで、ある瞬間に、共通の言語を持っていた人々の前でバベルの塔が崩壊し、言語的なコミュニケーションが不可能になるように……タイムマシンは人々が「共有している」と思えた時間認識をバラバラに砕いてしまうのです。タイムマシンのつくり方を考えることは、世界の分断と接続のありようを、自分たちの手元に引き戻す方法なのです。
タイムマシンは現代美術に限らず、文学や音楽、演劇、ゲーム、漫画、アニメ、科学、思想を横断しながら、それらを同時に考えるための物理的な枠組みです。だからどなたでも、表現者でも科学者でも観賞者でも、前提知識なしで集っていただけたらと思っています。
21世紀のタイムマシンをつくりましょう。
2. 実施情報
講師:布施琳太郎
形式:オンライン配信(アーカイブあり)
時間:17:00–19:00
第1回:2025年1月10日
第2回:2026年1月24日
第3回:2026年2月7日
第4回:2026年2月14日
交流会:2026年2月15日(東京都内でリアル開催、別料金)
第5回:2026年2月28日
第6回:2026年3月14日
料金:20,000円(一般)、10,000円(大学学部生or22歳以下、自己申告制)
支払い方法:銀行振込orPayPal
問い合わせ:rintarofuse@gmail.com
予約 → 銀行振込希望者用フォーム / PayPal希望者用フォーム
注意事項 → PDF
Q1. この講義でいう「タイムマシン」とは何ですか?
たんに時間を移動する乗り物のことではありません。
この講義で扱うタイムマシンとは、「同じ時間を生きていると思っている人々の時間認識を分断する装置」です。搭乗者と見送る者のあいだに生じる、取り返しのつかない経験のズレ。そのズレを生み出す装置を、現時点では「タイムマシン」と呼んでいます。
その上で、そうした定義を更新し、書き換えていくのが本講義の醍醐味です。
Q2. 比喩ではない、とはどういう意味ですか?
芸術作品の“たとえ”としてタイムマシンを語るのではありません。
実際に定義し、設計し、プロトタイプを考える対象として扱います。複雑な数式は使いませんが、思考装置=ガジェットとして、かなり具体的に考えます。
布施自身は講義と並行してタイムマシンのプロトタイピング(試作)に挑戦します。
Q3. なぜ今「タイムマシン」なのですか?
相対性理論、コンピュータ、インターネット、検索エンジン、ソーシャルメディア、生成AIによって、私たちはすでに「同じ時間を生きていない」状態に置かれています。未来は予測され、過去は編集され、現在はアルゴリズムに先取りされている。
あまりに「タイムマシン的」なのにもかかわらず、それをタイムマシンと呼んでこなかった。
だから今、この言葉を回収し直します。
Q4. 講義では何をするのですか?
毎回ひとつの問いを立て、調査を行い、それに基づいたタイムマシンのモデルを提示します。
神話、小説、映画、美術、詩、科学史、制御工学、情報技術などを横断しながら、「タイムマシンがどう発想され、どう変形されてきたか」を追い、最後には自分たちなりのモデルを組み立てます。
Q5. 全6回で扱う問いは?
- タイムマシンは、いつ・なぜ発想可能になったのか?
- 芸術は相対性理論以後、時間をどう扱ってきたのか?
- 検索エンジンや生成AIは、時間認識をどう破壊したのか?
- 詩やプロンプトを書くことは、どのように別の時間をつくるのか?
- 制御工学は「崩壊し、故障する未来」をどう現在に持ち込むのか?
- それらを踏まえて、いま、どんなタイムマシンがつくれるのか?
Q6. 理系でも文系でも大丈夫ですか?
大丈夫です。前提知識は不要です。
重要なのは専門性よりも「自分が生きている時間をみんなも生きている」を疑う感覚です。作家、アーティスト、詩人、研究者、鑑賞者の区別も問いません。
Q7. 受講後、何を持ち帰れますか?
- 「時間」を疑うための新しい語彙
- アイデアを生むための思考と実践のガジェット
- 作品や研究を組み立て直すための問いの立て方
- 世界をそのまま受け取らないためのズレた時間感覚
などなど完成した答えではなく、自分で考え続けるための道具を持ち帰ることになります。
Q8. 最終的に何を目指していますか?
21世紀版のタイムマシンを構想すること。
それは、世界をひとつにまとめる装置ではなく、
それぞれが違う時間を生きていることを引き受けるための装置です。
Q9. 内容についていけるか不安です。
各回が独立して色々な楽しみ方ができるものでありつつ、ゆるやかに接続されています。
飛ばし飛ばしの参加や、アーカイブ視聴でも理解できるように構成します。また、講義は完成された結論を提示する場ではなく、講師自身が迷いながら調べ、考える過程を共有するものです。「完全に理解する」ことより、「引っかかりを持ち帰る」ことを目標にしてください。
相対性理論や制御工学、AIなどの話題も扱いますが、それらは「専門的な理解」を目指すのではなく、「どのような時間の考え方が発明されたのか」「それがどんな想像力を可能にするのか」という視点から参照されます。
Q10. 受講者に発言や制作を求められますか?
発言や制作を強制するものではありません。
質問やコメントは歓迎しますが、聞くだけの参加でも問題ありません。講義内で紹介されるプロトタイプや思考モデルは、あくまで「見る」「考える」ための素材です。
しかし講師自身の学びのためにも都内での交流会を予定しています。そこでの質問などは活発になされたら、と考えています。
Q11. 講義中に扱うテーマは、事前に予習したほうがいいですか?
予習は必要ありません。
むしろ「知らない状態」で参加すること自体が、この講義の重要な前提です。紹介される作品や理論については、講義内で背景説明を行いますし、参考資料も共有します。
Q12. アーティスト向けの講義ですか?
アーティストに限りません。
制作を行う人だけでなく、研究者、学生、詩人、小説家、エンジニア、鑑賞者など、「考えること」や「つくること」に関心のある方すべてを対象としています。むしろ、立場の異なる人が同じ問いに触れること自体が、この講義の実験です。
Q13. 具体的にタイムマシンのアイデアを聞かせてください。
講義のなかで示していきたいことなので、ここでは抽象的に答えます。
例えば「過去/現在/未来」の区別や順序についての思考から離れながら、原因こそが結果になり、結果こそが原因になるようなシステムを考えてみましょう。
それが実現されたとき、そこにあるものをタイムマシンと呼ぶこともできるかもしれません。別の言い方をすれば、現在のなかに痕跡を残さない過去、そして現在のなかに痕跡を残す未来を同時に実現すること。そういった痕跡のシステムを、私たちの肉体の存在している「この世界」ではなく、ひとつのコンピュータゲームのなかに構築することもできます。
今回の講義でつくり方を知りたいのは、ドラえもんに出てくるような乗り物モデルのタイムマシンというより、浦島太郎が竜宮城から持ち帰ってきた玉手箱のようなものです。
玉手箱は失われた時間を急速に再生し、一瞬で、ひとりの人間のなかに長大な時間を流し込みます。だけど玉手箱のアイデアを発展させて、フタをひらく方向によって、時間が逆走したり、加速したりすることを想像することもできる。
そんな風な絵画制作を可能にする新しい筆はありえるだろうか?
こうした定義や問い自体が、講義の進行によって崩れながら再構成されていきます。タイムマシンについて考えることは、自分たちで何かをつくることの魅力——西洋由来の美術史から離れたとしてもたしかに存在する制作や設計のよろこび——を様々な角度から掘り起こしていくことで、無数のアイデアを発想するためのきっかけになると信じています。
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H.G.Wells "The Time Machine" and drawn by Virgil Finlay
Source: Wikimedia Commons (Public Domain)