新しい孤独
コ本や
会場となるのは当時は東京都北区の王子駅近くにあった古本販売を中心とした複合的なスペース「コ本や」である。会場にはQRコードが掲示されており、それを読み込むと本展企画者である「布施琳太郎」をLINE上で「友だちに追加」することができる。
するとBotプログラムによってメッセージが自動送信されてくる。店を出てから、再度別の入り口からビルに入ることを指示される。そうして屋上に出ると、そこには、野ざらし状態の展覧会が繰りひろげられている……作品は風で舞い、雨に濡らされて、ちぎれて無くなったり、再設置されたりする。
ステートメント
ボクが語るのは、決して鎖国的な自己への閉じこもりではない。これは社会というネットワークの中でのみ発見される「新しい孤独」である。
カンブリア爆発において、生命は突然に進化を遂げた。目を、光を獲得したのである。そのときボクは、ボクの身体がキミの身体と異なることに気がついた。更なる原初のとき、ボクとキミは無限の闇の中で、ひとつの空間の中で、繋がっていた。だが光によって、その空間はバラバラに切り裂かれ、ボクは孤独になった。
しかし孤独の中で、人間だけは、恋をすることを覚えた。意思を持って恋をすることは人間の条件であり、孤独の超克である。もちろん「恋をする」というのは他の人間を対象にした欲望のみを示すのではない。それは真剣に農業をすること、新しい道具を発明すること、真摯に絵を描くことなど、孤独の彼岸へ向かって対象と同一化する多様な行為の総称である。
そして人間は家族を作り、社会を作り、国家を作り、情報技術を発展させた。しかし気を抜くと人間は孤独を忘却してしまう。現代においては、情報技術によって地縁や血縁に縛られずに様々なコミニュティへ気軽に参加し「繋がり」を作る中で、いつしか孤独を忘却してしまった。だが孤独を超克することと忘却することは、まったく異なる営みである。
孤独を忘却するとき、本来、孤独によって獲得されていた「現実」までもが忘却される。
ボクが提示するのはこうした情報環境の中でのみ発見可能な「新しい孤独」である。それは孤独を忘却することを乗り越えて、もう一度、孤独を獲得することである。決して過去の孤独へ還ることを望んでいるのはない。しかし忘却を超克するとき、人間は孤独の忘却が可能になる以前には不可能だった「新しい孤独」を獲得する。
そしてそれはより強い恋となって、新しい創造力を渇望するだろう。

開催概要
会期:2017年3月22日-4月2日
会場:コ本や
キュレーション:布施琳太郎
企画:布施+コ本や honkbooks
ゲストアーティスト:
リスカちゃん、ニメイ、都築拓磨、:(;゙゚ʼω゚’):、日下部岳、xar (ex:VULRS)、名もなき実昌、杉尾龍一