地図は文字よりも古い。しかしこのことは地図が文字よりも単純であることや、地図から進化して文字が生まれたことを意味するのではない。地図とは人間の世界認識を外部化するメディアかつインターフェイスである。それはシンプルな形態をしているが、そこには人間の複雑な思考が圧縮されている。
地図は単に目的地へと至るための道のりを図示するわけではない。地図には、それぞれの時代・地域・慣習によって異なる仕方で認識された世界の形態が表象される。例えば先史時代においては、住居や狩場などの複数の場所が人間社会の優先度や関心に応じて自由に拡大縮小されながら砂上や獣皮などに記述された。あるいは古代ギリシャにおいては、数学や天文学を用いて計測された地球が球体であるという結果によって、地図の形式が変化した。そして西洋中世においては世界はローマを中心とした平面として認識され直したのである。それぞれの地図を見ることは、それを利用する人間ごとに異なる世界の形態を、垣間見ることなのだ。
では今日、どんな地図を描くことができるのだろうか。
地図は、動的で有機的な世界を、静的な型の中に歪めて畳み込むことによって生成される。この企画では、今日の世界の形態を表象して地図化することに、足を踏み入れていると考えることができる作家の作品を集めた。これらの作品は展覧会のなかで併置され、1枚の地図へと再構成される。
こうしたプロセスの中で取り返されるのは、地図と人間の関係において根本的で、無視することのできない「孤独」という性質である。孤独とは自分が自分自身に話しかける時間だ。人間が地図を描くとき、あるいは見るとき、自分自身と世界を構成する諸対象は1つの地平に併置される。そこでは自身の知覚を身体から切り離し、世界の外部に仮設することが試みられる。これこそが孤独である。領土からの浮遊。つまり主観と客観のやりとりによる様々な境界の措定、他者とのコミニュケーション、過去と現在による未来の予期。そしてこれらの外部に仮設された人間の知覚は世界を認識し直すのだ。そのための仮設に向けて――孤独による芸術の生産ではなく、芸術による孤独の生産のために――「孤独の地図」はリリースされる。
布施琳太郎
オープニングパーティ
12月1日 18:00~
トーク
12月14日 18:30-20:00
布施琳太郎+中尾拓哉
1000円
トーク
12月16日 18:00-20:00
布施琳太郎+藤田直哉
1000円
(イベントの観覧には別途「展覧会入場券(500円)」が必要です)
会期:12月1日~12月16日
時間:13:00~20:00
開廊:木, 金, 土, 日曜日
入場:500円(地図代)
会場:四谷未確認スタジオ
丸ノ内線「四谷三丁目」駅 徒歩5分、JR「四谷」駅 徒歩10分
企画/配置:布施琳太郎
メインビジュアル:八木幣二郎
作品:布施琳太郎
岩崎広大
永田康祐
cottolink feat.小御門早紀
最果タヒ(引用展示)
助成:公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団